32 / 230
第七章・3
「ま、待ってください。響也さん、待って……」
「そろそろ、お預けは勘弁してほしいな」
「でも。僕、何も……」
覆いかぶさってくる響也を腕で押し返しながら、麻衣は必死で訴えた。
「僕。僕は、どうすればいいんですか? 何か、やることは、無いんでしょうか!?」
「君は、ただ流れに身を任せればいい」
大丈夫、と響也は麻衣の耳元でささやいた。
「子羊みたいに、大人しくしていなさい。そうすれば、すぐに終わるよ」
「は、はい……」
麻衣は、息を詰めてこらえた。
耳元に触れていた響也の唇が、首筋を行き来する。
やがて鎖骨に移り、じわじわと胸をさまよう。
それだけで、麻衣は体中が熱く火照ってしまった。
ともだちにシェアしよう!