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第十四章 夜が始まる

「響也さんが今夜、僕の寝室へ来る……!」  それはもちろん、一緒に枕を並べてぐうぐう眠るのではなく、体を重ねるということだろう。 「どうしよう、ミドリ」 「ニャァ」  ミドリは前足で、テーブルの端末をつついた。 「そっか。哲郎先生に、報告と相談だよね」  麻衣は、スクリーン上の、哲郎の名をタップした。  幸い哲郎は、すぐに応答してくれた。  響也からの言葉を彼に伝え、麻衣は訊ねた。 「僕、どうしたらいいんでしょう」 『麻衣くん。今夜あいつと、セックスしてもいい、って気持ちはある?』 「えっと……、はい」 『うん。まずは、そこが一番大切だから』  哲哉は、いくら響也が欲してきても、麻衣にその気がなければ断る勇気が必要だ、と説いた。 『それが、たとえ妊娠しやすい体の周期だとしても、だ』 「でも。僕、赤ちゃんは欲しいです」 『解ってる。しかしそれ以上に、まずは二人の気持ちが整わないと。双方が、愛し合わなきゃ』

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