83 / 230
第十七章・3
では、と哲郎が麻衣に、今後の注意点など話しているところへ、響也がやって来た。
「おや? 響也は朝食中のはずだが?」
「5分で済ませた。それより、哲郎。麻衣は、どんな具合だ?」
どんな、って。
哲郎は、これまでの所見を語った。
「体温や血圧、血中酸素濃度は全て異常なし。肛門に裂傷及び炎症無し……」
「何!?」
目に見えて顔色の変わった響也に、哲郎は驚いた。
「何か俺、変なこと言ったか?」
「お、お前は! 麻衣の、尻を見たのか!?」
「診たよ」
おのれ、と哲郎の緩いネクタイを締めあげる響也だ。
麻衣は大慌てで、それを止めに入った。
「待ってください、響也さん! 先生は、僕がケガをしていないか診てくれただけです!」
麻衣にたしなめられ、響也はいったん哲郎から離れた。
「ま、まぁ、お前は腐っても医者だからな……」
「腐ってなんかいないぞ」
それはさておき、と響也は今度は身を乗り出した。
「どうなんだ? できたのか?」
「何が、できるんだ」
「たわけ。子どもに決まってるだろう。私と麻衣の、赤ちゃんだ!」
あまりに無邪気な響也の言葉に、哲郎は思わず吹き出していた。
ともだちにシェアしよう!