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第十七章・5
「つまり、だ」
午前中の執務のために書斎にこもった響也は、仕事そっちのけで物思いにふけっていた。
哲郎の説明を、思い返していた。
『妊娠検査薬反応が出るのは、着床から14日以降だよ』
つまり、2週間後に麻衣に会えばいいわけだ。
子どもができたか、できなかったか。
いや、会わなくても、連絡さえ取れれば事足りる。
もっと言えば、麻衣でなくても結果は解る。
哲郎か、または執事の岩倉に訊ねればいい話だ。
これまでの婚約者たちには、実際そうしてきた。
『どうだ。子どもは、できたか?』
『ごめんなさい。今回も、残念ながら……』
そんな会話を、繰り返してきた。
だがしかし。
「理性では、それが最短の合理的な方法だ。しかし……」
感情が、どんどん膨らんできて、戸惑っているのだ。
「麻衣と2週間も会わずに過ごすなんて。それは非常につまらないな」
あの笑顔を、見たい。
あの声を、聞きたい。
一緒に、楽しく過ごしたいのだ。
響也は、端末に手を伸ばしていた。
「麻衣か? よかったら、10時のティータイムに付き合ってくれないだろうか」
響也は、青髭公は、変わり始めていた。
【多忙につき、明日16日(月)より数日間、休載させていただきます。あしからず、ご了承ください。<(_ _)>】
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