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第四十章・4

「麻衣……、惚れなおしたよ」  そんな響也の言葉に、麻衣は目をぱちくりしている。 「ちょ、響也さ。いえ、あの、その……!?」 「改めて、好きになった。愛してるよ、麻衣」 「い、いやですね。こんな所で!」  周りに、人がいるんですよ?  誰かが、聞いているんですよ?  浴衣の袖をぱたぱたさせて、夜空へ羽ばたく勢いの、麻衣だ。 「本当に。君は、私にはもったいないほどの、存在だ」  だが、とも思う。 「だが、他の誰にも、渡したくない」  私の隣に、いて欲しい。  熱くささやく響也の胸に、麻衣は自分から飛び込んだ。 「僕の。僕の傍に、いてください……!」  響也を見上げるその黒い瞳は、潤んでいた。  その声は、響也とは違い、切羽詰まっていた。

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