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1、第1話「引っ越し」
今日こそは!!気合いを入れながら次々に段ボールを開けて荷物を片付けていく。
待ちに待った新生活。
やっと……もう、今日は絶対に逃さねぇ!!
「あ、宮部 ?これお前の……」
立ち上がって段ボールから手にしたシャツを持ってリビングを覗いた俺はピタリと動きを止めた。
ペタリと床に座ってソファーに腕を乗せてスヤスヤと寝ている男。
サラサラの黒髪は目にかなりかかっていて閉じた目をほとんど隠している。
その前髪を少し掻き上げて規則正しい寝息をたてているその顔を見つめていると、宮部は少し眉を寄せてすぐにまたすぅすぅと穏やかな顔で眠る。
「マジかよ……」
わざとそのソファーに勢いよく腰掛けてみても座った衝撃で乗せていた宮部の腕が跳ねて頭も動いただけで宮部は起きない。
俺は仰け反って反転した部屋を見ながらため息を吐いた。
今日から新生活。
俺と宮部は今日から二人で新しく生活するのに……。
「キスすんぞ」
体を起こして目を細めてみても宮部は起きる気配さえない。
俺はもう一度ため息を吐きながらがっくりと項垂れた。
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