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高二の夏、終業式のあの日。
俺たちは両想いになって、しかも、その日から家庭の事情で宮部は俺の家で一緒に暮らすことになった。
なのに表立っては……と家の中でもいつも逃げたあいつ。
手を繋ぐことさえなかなか許してくれなくて、繋いでみてもすぐにすり抜ける。
こっそりあいつが使っていた父さんの部屋に行ってみても「手伝いしなきゃ」なんて逃げていった。
“付き合う”と確認したそれさえ逃げようとした宮部に何度も告白してから一年八ヶ月。
その間、キスをしたのだってたったの三回。
それも軽く触れるだけで唇は頑として開けてくれなかった。
「お前、一人ではヌいてるよな?」
もう耐えられなくて聞いてみたら一週間以上目さえも合わせてくれなかったし。
俺が宮部のことを好きだとバレていた女友達の凜華 がずっとチャラチャラして女と遊んでばかりいた(キス以上はしないと宣言していたけど)俺のカモフラージュとしてよく一緒に居てくれたが、それにはヤキモチを妬くくせに……だ。
わかりやすく怒ったりはしない。
ただ、ちょっと不機嫌で、スネて俺との距離をいつも以上に取ろうとする。
高校を卒業して大学は違うけどお互いの大学はすぐ近くだから何とか一緒に家を出て二人で暮らすことにはしたけど……このざまだ。
今までいつもやけに縮こまっていた宮部が無防備に寝ている姿は嬉しいが……さすがに引っ越し初日。
少しくらいは甘い展開に持ち込みたかった。
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