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「ただいまー!」  階段を上ってリビングのドアを開けても宮部の姿が見えない。 「宮部?」  カウンターに皿や箸は並んでいるのにキッチンにもその姿はないし、ソファーにも宮部の部屋にも居ない。  まだ準備中だったか?とドキドキしながら風呂場に行っても、水音どころか濡れた形跡もなくて宮部も居なかった。 「……え?」  不安になりつつかばんを降ろしに俺の部屋に入ろうと電気を点けると、探していた宮部は床に座ったまま俺のベッドに腕を乗せてスヤスヤと眠っている。 「……またかよ」  何となく引っ越し初日のあの昂ぶって期待していたのに甘くもならなかったのを思い出して頬を掻いた。  気持ちよさそうに寝息を立てて穏やかに眠る宮部。  前より短くなったとはいえ目に掛かっている前髪を指で退かすと、宮部は「ん」と身動ぎをした。  そのまま目を開けてゆっくり起き上がりながら宮部はとろんとした目をこっちに向ける。 「……昨日も遅くまで勉強して疲れたか?」  髪を撫でながら聞くと、宮部はハッとしたように姿勢を正してキョロキョロと辺りを見た。 「え、今何時?」 「もうすぐ17時」 「ごめん!ご飯食べるよね?焼くだけにはしたから準備するね!」 「いや、疲れてたんだろ?それなら俺やるって。今日はゆっくり風呂入って……もう寝るか?」 「……え?」  慌てて立ち上がろうとした宮部が動きを止める。  こっちを見た宮部の目はヒドく悲しそうだった。

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