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第13話
「すげぇな、めっちゃドキドキしてる」
「う……三太もだろ」
はは と笑って返すと、睨むように見上げられて……
「当たり前だろ」
頬を掴んでぎゅうぎゅうと捏ねてやると、複雑そうな表情を映す目が俺を見上げた。
笑顔一つうまく作ることのできない不器用なフルだけれど、俺に向ける瞳だけは雄弁なのだから、それを思うときゅうっと胸が苦しくなるような愛おしさが湧いてくる。
フルは最低だった人生の中で見つけた、ピカピカした星のような存在だ。
大切な大切な……
客足がひと段落するころ、「こーんばんわぁ!」って元気が声がして店の戸が開く。
ピンク色の髪が見えて、いつ見てもにこにこと元気の良さそうな笑顔が続いた。
「やぁ、いらっしゃい」
「こんばんは」
ピンク頭の子の後ろから、包みを持った青年が一緒に入ってくる。
サーフィンでもしてそうなちゃらちゃらとした顔立ちの割に、律儀に年末の挨拶に来たのだと言って菓子折りを差し出す。
「ああ。ありがとう、来年もよろしくね」
「フルちゃんは?」
「奥にいるよ」
そう言うと、ピンク頭の子は勝手知ったるとばかりに奥の方へと飛び込んで行く。
フルの無表情にも気を悪くしない、数少ない友人の登場に今頃喜んでいるだろう。
一人で家にいたくないと言うから店につれて来てはいるけれど……フルの体はまだ俺を受け入れることに対して慣れてなくて、行為の後は体が辛そうにしている。
今日も結局動けなくなって、奥で休む羽目になってしまった。
もう少し間を開けるなり、手加減するなりしてやればいいのかもしれなかったが、つい夢中になってしまう。
「 噂、聞きましたよ」
そう言われてはっと思考を戻すと、垂れ目をにやりと細めているところだった。
「なん、……なんの?」
「三太さんの過保護が過熱中だって」
はは と笑い交じりで言われたけれど、含む意味合いに渋い顔をするしかない。
そりゃちょっと、あれから距離感がバグってるなとは思わなくもなかったけれど……
「いや、それは、……」
「おめでとうございます、良いクリスマスだったようですね」
「う 」
難しい顔をしているのにそう言われてしまうと、によによと端から表情が崩れていくのを止められなかった。
END.
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