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第30話これは不味い状況です

僕たちは荒い息を吐きながら、海斗と自分の手の中で踊るそれを握り合っていた。海斗の首に回した腕で唇を引き寄せて、甘える様に舌を絡めながら、気持ちよさに溺れていた。 ここは学校だというのに、僕たちは乱れた格好で行き過ぎた快感を追っている。僕は震える身体をしならせて、海斗の手の中で果てた。同時にぐんと揺さぶられて海斗もまた逝った。 僕は急に冷静になってきて、このドロドロな状況を見下ろすとため息をついた。 「…どうしよう。こんなになって。」 海斗がズボンのポケットからテイッシュを取り出してあちこちを拭いてくれた。拭きながらニヤッと笑って呟いた。 「…この部屋に、色々置いておいた方が良いかな。」 僕は顔が熱くなるのを感じながら、海斗に口を尖らして言った。 「もう、こんな事しないから。…キスまでなら良いけど。」 そう言いながらも、もしかして強請ったのは自分だったかもしれないと思った。無意識に海斗の腿に高まった身体を押し付けたのは僕だ。僕はフウッとため息をついた。 「…僕って、もしかして淫乱なのかな。」 海斗がギョッとした様に僕を覗き込んだけれど、今度は真剣な顔で僕を見つめて言った。 「洸太は全然そんなんじゃないよ。俺が我慢できないだけ。ごめんな?」 どちらかがどうとか言うことじゃない気がした僕は、海斗の顔を見つめて言った。 「僕だって、海斗とイチャイチャしたかったから。同罪だよ。何か僕、初恋でこんなに急に進んじゃって、舞い上がってるのかも。何が正解か分かんないし。」 僕がそう言うと、海斗は僕をガバッと抱きしめて言った。 「はぁ、洸太って可愛すぎなんだけど!俺も初恋だからね?!もう、凄まじい勢いで舞い上がってる。ロケット並み!」 それから僕の顔を見つめて言った。 「初恋で、両思いになって、初めての相手で、しょっちゅうイチャイチャ出来るとか、最高じゃん?洸太が俺のこと好きになってくれて、本当に嬉しいんだけど!」 僕たちはにっこり笑い合って顔を近づけたんだけど、予鈴のチャイムが鳴って、僕たちは慌ただしく資料室から周囲を気にしながら出た。 第二校舎は専科や選択授業に使う教室が多いので、昼休みということもあってひと気が無かった。僕は見るからにご機嫌な海斗の少し後を歩きながら、いつもポケットにウェットテイッシュを持ち歩こうと、心に決めたんだ。

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