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第31話海斗side朝のルーティング 【完】

「おはよう、洸太。…洸太?そろそろ起きないと。」 俺はベッドでまだ目を閉じている洸太を覗き込んだ。付き合い始めた頃にはこんな風になるなんて思いもしなかった。俺はニヤニヤしていたに違いない。 まだ眠そうな眼差しで俺を見つめる洸太が、モゴモゴと呟いた。 「海斗、またニヤついてる…。」 俺はベッドサイドに座ると、洸太の髪をかき混ぜた。俺は洸太の少し癖のある柔らかな髪が好きなんだ。俺と同じ匂いのする髪に口づけるとクスッと笑う声が聞こえる。 「…俺たちがこうやってシェアハウスで公然と同棲出来るなんて、何だか信じられなくて。」 俺がそう言うと、洸太は呆れたように俺に手を伸ばして唇を摘んだ。 「それ、何度も聞いたけど。あー、もう。海斗が僕を好き過ぎて、僕溶け出しちゃいそう。」 そう言いながら、ムクリと起き上がると、俺にぎゅっと抱きついて言った。 「おはよう、海斗。僕も大好き。ねぇ、そろそろ起きないといけないんじゃなかった?」 俺は慌てて洸太から離れると、先に朝食を用意すると言って、リビングへと戻った。冷蔵庫から、昨夜洸太が作り置きしておいてくれたハムチーズサンドを、ホットサンドメーカーでこんがり焼きながら、コーヒーをセットした。 シャワーを浴びて身支度をしてきた洸太が、食べ始めた俺の前に座った。淹れたばかりのカフェオレを飲みながら、今日のスケジュールを確認し合うのが毎朝のお決まりなんだ。 「今日はバイトが入ってるから、8時過ぎになるかな。いつも飲みに行こうってしつこく誘ってくる田中は、今日は一緒じゃないから真っ直ぐ帰るよ。」 洸太のスケジュールを聞いて、眉をしかめてため息をついた。 「洸太って何気にホイホイなんだよな…。俺はバイトない日だから夕食作るよ。カレーとかで良ければ。」 洸太は俺ににっこり笑って言った。 「やった!海斗のカレー、美味しいからね。楽しみ!あ、ヤバ。結構時間ヤバいわ。一緒に駅まで行く?海斗一限有るんだよね?」 俺は駅の改札へ向かう洸太を見送ると、自転車に乗り直してキャンパスへ向かった。俺は洸太とは反対方向の駅二つの大学へと自転車で通っている。 結局理系の俺と、文系の洸太は別々の大学へ進学した。理系は授業がキツいからと、洸太が俺の大学の近くにマンションを決めてくれて、シェアしながら一緒に住んでいるんだ。 俺の可愛がりのせいで高三の頃から妙な色気が出てしまった洸太は、男にも女にも目をつけられるようになって、俺としては気が気じゃない。 けれども洸太自身はいつも俺を真っ直ぐに見つめて、大好きだと言ってくれるので、俺はドキドキ、ムラムラしてしょうがない。毎朝、洸太と同じベッドで目覚めるとか、最高だけど、結構試練なんだ。 俺はまだそんなに多くない学生の横を素通りして、いつもの置き場に自転車を停めると、今夜はじっくり洸太を堪能しようかと、ニヤニヤしながらキャンパスを歩き出した。 ああ、俺って前世で相当な善を施したに違いないよ!                 【完】 結構イチャイチャ、楽しい感じで書けたと思いますw この二人のペアは好きなので、番外編など書いても楽しいかもと思っています。 読者の皆様、応援ありがとうございました♫

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