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into u;8;桂
そのさん、そのさん、と、湯船の中で繰り返し呟いた。すっごいしっくりくる。えーーーなにこの感情……!一言で表すなら完全に恋。あー、そうか、久しく恋愛から遠ざかっていたのは、そのさんと出会うためだったんだなきっと。
……さっきからむちゃくちゃ浮かれている。
胸の高鳴りが抑えられなさすぎる!
なんてかわいいんだろう。初めて会った時から思ってたけど、それにしても本当にかわいい。
ずっとこんな腑抜けた気分で洗い終えて、浴室のドアを開けた。タオルをお借りして、
「先生、着替え………」
声の方を見ると、そのさんが着替えと思しきものを抱きしめて立っていた。目をまんまるにして…
「……ここ、置いときます」
「ありがとうございます」
そそくさと行ってしまった。
シンプルなネイビーのスウェットをお借りして、リビングに戻る。
キッチンのそばには小さなテーブルと椅子が二脚。そのテーブルにはどんぶりが二つ。
「いい匂い」
「期待しないで下さい。消化にいいものの方がいいから、…あ、座って下さい」
「ありがとうございます」
どんぶりの中には、雑炊が入っている。レトルトじゃない、作ったと思われる…!
更にそのさんはキッチンから小皿を二つ持ってきて、テーブルに並べた。
「嫌いなものないですか?あと今更ですけどアレルギーとか…」
「なんでも食べられます!」
「…良かった」
そのさんは少し表情が柔らかくなった。
「鶏肉のおじやと、白和えです。あ、入ってるのはほうれん草とにんじん…」
「そのさん最高すぎです…!」
すごいんだけど…!
こうやって作ってもらったご飯を食べるのとか、いつぶりだろう?めちゃくちゃおいしそう!
そのさんは向かいの椅子に座った。
「食べてもないのに最高って言うのはちょっと」
「えー、作ってくれたっていう事実から最高ですけど」
「…食べてがっかりしても黙ってて下さいね。褒められた状態でいい気にさせといて下さい」
こういうところ可愛すぎる。あーーー、どうしたもんかなこれ
「どうぞ、召し上がって下さい」
「ありがとう、いただきます!」
めちゃくちゃおいしい。箸が止まらない。おかわりしたいくらいおいしい。
「……ゆっくり食べたらいいのに」
「おいしすぎて」
「…よかったです。頭、痛みませんか?」
「痛くないことはないけど、全然平気です。なんだろうな、怪我の功名と言いますか」
「え?」
「そのさんと一緒に過ごせて嬉しい」
目が合った。大きな目がもっと大きくなる。
「かわいい、そのさん」
「…!なんなんですか、人が心配してんのに」
「だって本当にそう思うから…かわいいなあって。好きなんですもん」
「あの、そういうの良くない!あーー、頭打ってるからか」
「違うって!初めて会ったときからそう思ってた。好きなタイプだって」
「男に?」
「うん」
「……えー…」
「どうにもこうにもかもしれないけど、隠しませんよ俺は。さっきまでひた隠しにしようと思ってたけど、この際もう」
「え、男が好きなんですか?」
「いや、今までは女性ばっかりです、好きになったの」
「食べ終わったら早く休みましょうね」
「頭打つ前から好きです」
「話がタイムリープしてる」
「頭打ったからかな」
「そうですよきっと」
そのさんは食べ終えた食器を持って、キッチンへ向かった。
「おかわりもあります」
「え、ぜひ頂きたいです」
小鍋を持ったそのさんは、サッとどんぶりによそってくれた。テキパキしてる。
一挙手一投足全部が魅力的に見える。
「ありがとう」
「…どういたしまして」
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