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into u;10;苑
滝行をするみたいに、シャワーを頭から被った。
全部流されていって欲しかった。
理想のパパみたいな感じ!って言った環の無邪気な笑顔を必死で思い返した。そうなんだよ、父親には恋愛感情なんて抱かないだろ!
そうやって何回も考えを持っていこうとしても、別に俺父親に理想も何もないし。だから関野先生にそんな理想のパパって感じは抱けない。
……だからなんなんだ?
「…だから、」
かわいいとか、好みだとか、そんな鳥肌立つような言葉、目を見て言われたことなかった。そんなのってしょうもない、と、思ってた。
環には内緒で、性欲を発散するだけのためにそういう相手を時折探すけど、当たり前にそんな言葉をかけてくる男はいない。
とっくに自分だけの恋人をつくることなんて諦めてる。なのに、諦められなくなるじゃないか、
期待していいわけないのに、
全然すっきりしなかった。
元気そうだったんだし、自分の家で安静にしてたらいいんじゃないですか?って言えば良かった?
寝る支度を終えてリビングに戻った。不意に寝室に目が行く。なにかあったらいけないから、開けっぱなしにしている。
盛り上がった布団が見える。
近づいて、ベッドを見下ろした。横向きになって眠っている。しゃがむと、ちょうど目の前に顔が見える。
あざ、やっぱり痛々しい。ぶつけてないところにも、これから少し色が広がってしまうはず。このきれいな鼻、折れてなくてほんと良かった…腫れてきたらどうしようかと思ってた…
瞼には前髪がさらさらとかかっている。学校で会う時はセットされてるから、なんか新鮮に見える。ほんの少し茶色い。染めてるんじゃなくて元の色なのかな?
いつも笑ってる唇が、今はまっすぐなのも新鮮に見えた。
……っていうか、「いつも」なんて言えるほど、俺は関野先生のことを知らない。
知りたいと思ってしまった。
この人のことをもっと、どんな人なのか知りたい。
そっと手を伸ばした。柔らかい髪に触れた。
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