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それは幻想的な魔法みたいで 1

 俺とレイヴンは野暮用で外出している。  これが野暮用じゃなきゃ楽しかったんだが、用事を済まさないと二人きりを楽しめねぇ。 「……また余計なことを考えてますね? 今はこちらに集中してもらわないと。あ……」  レイヴンが口を噤む。  野暮用ってのは、アレーシュの領土内にある田畑を荒らしてるっていう熊型の魔物を退治して欲しいっていうことだったんだが。  本来は王国騎士団の仕事だってのに、そっちはそっちで別の魔物退治で出払ってるから行けねぇとか言いやがって。  腹が立ったからレイヴンと二人なら行っても良いって条件つけたら、ウルガーの野郎……。  喜んで留守を守らせていただきます! じゃねぇんだよ。  アイツは出張る側の騎士の癖して魔塔に何かあったら大変とか、うまいこと並べ立てやがって。  サボりたかっただけじゃねぇか。 「――火の鳥(ファイアバード)」  名の通りの火の鳥を魔力(マナ)で形成する。  そいつを漸く姿を現した熊に向けて飛ばす。 「え? 鳥?」  レイヴンがもう一体の熊に風の弾丸(ウィンドバレット)を連続で放って致命傷を負わせている間に、鳥は数体の熊の上を優雅に舞う。  うざったそうに熊が反応したところで、指を弾く。 「――分割(ディバイド)、からの羽ばたき(フラップ)」  命令を魔法としてのせると、炎の鳥は羽ばたいて熊の頭上で炎を注いで火の粉を降らす。 「また! それ付近も燃えるやつじゃないですか! ああもう……水の雨(ウォーターレイン)」  炎は熊の身体にまとわりついてみるみる身体を燃やし尽くしていく。  ついでに地面がちょっと焦げるくらい別にいいのによ。  レイヴンが丁寧に魔法で消火する。 「ジャイアントベアくらい、なんとかして欲しいところなんだがなぁ」 「あの大きさは希少種っぽかったですし、その強さに惹かれて数体集まってたんですから、大事になる前に間に合って良かったじゃないですか」 「まぁ、別にいいけどよ」  探索(サーチ)でも他の個体はみつからないし、これで殲滅だな。 「何か今日は雲が厚いですよね。アレーシュは大体晴れているから珍しい気がします」 「あぁ……この感じは。めったにないが今夜辺りきそうだな」 「何がですか?」 「あぁ、レイヴンも初めてか? 俺も他の国では見たがアレーシュでは久しぶりだな」  勿体ぶって何も言わないと、レイヴンがジッと見つめてくる。 「夜にイイところに連れて行ってやるから。それまでヤキモキしてろよ。そういや防寒具持ってたか?」 「防寒具ですか? 一応は。基本は魔法で調節できますけど……」 「ま、雰囲気ってヤツだ。迎えに行くから準備しとけよ」 「はぁ……分かりました……」  納得してないレイヴンを笑いながら撫でて、移動(テレポート)で帰還する。

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