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柊side3
✩.*˚
ゲイだと自覚してから、タケルはよく行くナイトクラブに僕を連れて行ってくれた。
『普通に暮らしてても周りにはゲイはおらんやろ?でも俺らのように同性を好きになる仲間はそこにはたくさんいる。何事も経験や、一緒に行くで』
そうして僕は初めてナイトクラブに足を踏み入れた。
女の人が一人もいない空間で
クラブミュージックが流れて薄暗いフロアにたくさんの人が集まってく
る。
踊り、出会い、恋をしたり一夜を共にする相手を探しに来ている。
思い思いに楽しむ人達の人混みをかき分け、僕はダンスフロアから少し離れたバーカウンターに真っ直ぐ向かった。
「あの・・・モスコミュールを・・・あっ、モスコミュール!」
僕は勇気を出して寛太に注文すると俺の方に体を乗り出して耳に手を当てたから慌てて大きい声で言い直すと 寛太さんは親指と人差し指で丸を作りながらウインクをしてから、モスコミュールを作ってくれた。
僕は週末、寛太さんがいる日の夜にはクラブに1人で行くようになった。
踊るわけでも男の人との出会いを探しにきてるわけではなく、僕はバーカウンターの端でカクテルを飲みながら寛太さんに逢いに来ている。
と言っても、お酒を作りながらもひっきりなしに声をかけられ、お客さんと楽しそうに話している寛太さんに声もかける勇気もなかった。
───寛太は1度した相手とは2度はしない。楽しければそれでいい。後腐れない関係を望んでる生粋の遊び人だよ
タケルもそう言っていたし、よく来る常連さんが僕にそう教えた。
僕はそれでも寛太さんが好きだった。
来年には地元に帰らなければならない。
僕には時間が限られていた。
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