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生まれ変わったΩが起こしたキセキ 2

 互いに喜びに浸っていると、俺の中の宗佑を求める欲が深くなった。元々、発情している身体なのだからここで抑えろという方が無理な話だった。 「ん……ん、んんぅ……」  気づけば宗佑と俺は互いを貪るように求め合っていた。獣人とのキスは恵の時でもあまりしたことがなく、どう行うのが正解なのかがわからない。人型よりも口が大きく、歯も鋭い彼に対して行う俺のそれは、赤ちゃんが指をしゃぶるようなものだろう。 「はあ……宗佑……」  宗佑の長い舌が俺の口腔を蹂躙すると、射精したばかりの陰茎は硬度が増し、再び熱を帯び始めた。  宗佑は俺と、そして俺の中にいる赤ちゃんに負担をかけないよう、ゆっくりと、そして丁寧に、時間をかけて愛撫を行った。これは血筋なのだろうか。初めて正臣が恵を抱いた時も、彼は発情で苦しむ恵を終始気遣っていた。  しかしこの手の温もりは、正臣とは似て異なるものだ。 「愛しているよ、ケイ……」  ああ、幸せだ。こんなに嬉しい発情もない。  俺は宗佑の腕の中で、至福の時間を存分に味わった。  ――――… 「まさか、病院でヤっていたなんて……」 「妊娠している人間に即効性の高い抑制剤を打ってしまったからね。もちろん、Ω用だし大丈夫なんだけれど……怪我もあったから念の為だよ」  落ち込む俺の肩を抱くのは、新しいスーツに身を包んだ宗佑だ。彼は爽やか且つ飄々としている。対して俺は、とてもじゃないが彼と同じようには振る舞えなかった。  これがいったいどういう状況なのか、一旦整理しよう。  俺と耀太君は昨日、たわけ共の従兄弟達のいざこざに巻き込まれ、AVスタジオと称した廃ビルの中へと拉致された。あやうくAV出演させられるところだった俺はタイミング良く現れた宗佑によって救出され、丹下が出資する総合病院へと運び込まれた。  まだ番が成立していなかった俺は奴らの薬によって強制的に発情を促されていた為、辺りにフェロモンを撒き散らし始めた。その為、宗佑によって即座に抑制剤を投与されたものの、それだけでは発情期は抑えられなかった。  病院で治療を受けるも、俺にとって特別な存在であるαの宗佑が傍で看病をしてくれていたお陰なのか、フェロモンこそ弱まったものの、発情中の俺は寝惚け眼で周りをよく見ず、本能的に宗佑を求めてしまった。  確かに、あの時は宗佑以外に誰もいなかった。それもそのはず、俺が目覚めたあの部屋は病院の中でも最高ランクの個室だったからだ。  最悪だったのは、朝の検診と朝食の用意で入室した医師や看護師さん達に、宗佑と抱き合いながらスヤスヤと眠る姿を見られてしまったことだ。もちろん、生まれたままの姿を。 「もう結婚できないぃ……」 「私が嫁にもらうから、大丈夫だよ」  宗佑がさらりと慰めてくれたが、そういうことではない。  ちなみに、どうしてああもタイミング良く宗佑が現れ、俺と耀太君を助けられたのかと言うと。 「君がこのチョーカーを外さない限り、私は君のものだからね」  婚約チョーカーのベルトの部分に、最新型の発信機が取りつけられているからだった。探索以外の機能もあるらしいが、地図からしてアナログ派の俺の頭にはすんなりと入ってこなかった。  またΩ用の抑制剤を持っていたのは、耀太君が初めてマンションへ泊まった日に俺のフェロモンを感じたことが気になっていたかららしい。宗佑も俺と同じく、番になったという確信を得られなかった為、万が一の場合に向けて用意していたとのことだ。その間、発情しなかったのはたまたまなのか、それとも宗佑に触れられることで欲が満たされていたからなのかはわからない。  とにかく無事で良かったと安堵してくれる宗佑は、今朝も起きてすぐに俺を抱き締めた。正気に戻った俺も後から恐怖に苛まれるも、宗佑の匂いを間近に感じることで落ち着きを取り戻していった。  出張も仕事も放り出して、俺の危機に駆けつけてくれたこの人には、感謝の言葉しかない。俺は宗佑から贈られたこのチョーカーを、一生大事にしようと心に誓った。  ベッドから上体を起こして、宗佑と共に病院の昼食を食べる俺は別室で休んでいるという耀太君の名前を口にした。 「耀太君も大したことがないみたいで本当に良かった。獣人って身体が頑丈なんだな」 「あの子はαの中でも身体能力がずば抜けていてね。それに伴い身体の方も強くなったんだ。本当なら入院もしなくて大丈夫なくらいなんだけれどね」  かすり傷とはいえ、頭を怪我しているので念の為の検査入院だそうだ。  当の本人は、これで堂々と休めるぜ! と、今はベッドから離れずスマホゲームに夢中らしい。でもそれだけ元気なら安心だ。  病院食とは思えないほど美味しい食事をゆっくりと味わいつつ、俺はデザートの果物を食べる宗佑の顔を見た。 「宗佑は何処も怪我していないんだよね?」 「ああ。私は昔から、喧嘩の類いに負けたことがないんだ」 「へ……へー」  平然と言ってのける宗佑から、俺はゆっくりと視線を逸した。素人目から見ても、あれは喧嘩というレベルのものではなかった。若い頃に格闘技か何かをやっていた、と言われた方が幾分も納得してしまう。  実際、怪我はないのだろう。宗佑があの場へ乗り込んだ際、一緒に突入してきた黒いスーツを着た人達は彼が引き連れた部下だという。強面揃いのSPみたいな風貌の人達が宗佑に続いてあの連中を取り鎮めていた。そんな方々を部下に従えている宗佑には驚きを隠せない。これは里中ではなく、丹下の方の力だろう。  とにかく、あの場にいた連中は全員取り押さえられ、身柄は警察に引き渡されたとのこと。従兄弟二人については田井中本家に判断を委ねるからと、田井中当主である陸郎の下へ引き渡したそうだ。今頃、こっぴどく叱られていることだろう。 「それよりも……」  宗佑はフォークをトレーに置いて、俺の口端につくソースをティッシュで拭いながら言った。 「圭介の身体の方が大切だ。あんな連中相手に顔を殴られ、大したことなく済んだのが奇跡だよ。それにもう、一人の身体じゃない。これから出産に向けてさらに大事にしなければならないからね」  そう。俺は今朝の検査ではっきりと、妊娠が判明した。エコーを見ながら宗佑と共に喜び合う中、担当の先生が珍しそうに笑って言った言葉が頭から離れない。 『おお、これはこれは……ほっほっ! お母さん、これからが楽しみだねぇ』  本当に、楽しみなことだらけだ。お母さんと再び呼ばれる日が来たのだから、今度は出産を頑張るのみ。  俺は拳を前にして、力強く握ってみせた。 「大丈夫! いきみは任せろ!」

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