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第1話 きっかけの合コン
その日、志水三起也 は、友人の小野和夫 から合コンの誘いを受けた。
「なー、頼むよー。志水ー。おまえが来るとなると、女の子の参加数が一気に増えるんだよー」
「やだよ。忙しいし。遠慮しとく」
志水はあっさりと小野の懇願をはねのける。もともと合コンには興味がない。
だが、小野はしつこく食い下がってくる。
「でも、今日の相手は弥都女だからレベル高いぞ」
弥都女子短期大学、通称弥都女は、有名なお嬢様校で美人が多いと評判でもある。
それでも志水の気持ちは動かなかった。
「だからマジ忙しいんだって。バイト探さなきゃいけないし」
「そんな、志水、冷たいことを。な、合コンの金は払わなくてもいいからさー、頼むよー」
小野は手を合わせてお願いする。その友人の必死な姿に、志水は折れた……わけではなく、合コンの金を払わなくてもいいというところに引かれたのだ。
……一食分、浮くな。
そんなあさましい計算が志水の頭の中でなされた結果、彼は居酒屋で行われている弥都女との合コンの席に座っていた。
ほとんどの女の子たちの視線と関心は、志水一人に集中し、その女の子たちの気を必死になって引こうとしている他の男子たち。
当の志水はひたすら料理を食べ、アルコールを飲んでいた。
女の子たちがあまりにも志水のことばかり見ているので、さすがに少し場がしらけてきたが、志水は気づかない。
普段から女性に見られることになれている志水は、異性の熱い視線にはいささか鈍感になっているのだ。
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