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洗面所で重たい靴下を脱ぎ捨て、バスタオルを二枚引っ張り出してから急いでリビングへと向かう。 扉を開け中に入ると、芝崎はどこか緊張した面持ちでいて。棒立ちのまま、キョロキョロとしながら佇んでいた。 「何してる、早く脱げ。」 タオルを渡し告げれば、芝崎は上擦った返事を寄越し。のそのそと学ランに手を掛ける。 あれだけ雨に晒された芝崎の制服は、下に着たTシャツにまで染み込んでいて。ポタポタと床に水が滴り、落ちていった。 それを勢い良く脱げば… 想像以上に逞しい上半身が露わになる。 髪から顎を伝い、鍛えられた胸板に筋を成していく水滴に…程良く色づいた、健康的な肌質。 自分の身体とは根本的に造りから違う、彫刻のような肉体美を目の当たりにして…。 僕は不覚にも、つい魅入ってしまうのだった。 伴って、激しさを増す心音に耐えきれず…。 僕は慌てて芝崎から、視線を逸らす。 「…先輩も脱いだら?」 タオルで豪快に頭を拭きながら、声を掛けてきた芝崎にハッと我に返る。 なんだか居たたまれなくなって。 僕は誤魔化すよう、いそいそと制服のボタンに手を掛けた。 コイツの身体を目の当たりにした後で、見せられるような身体じゃなかったが。 ここで躊躇うのも、なんだか自分だけが意識しているみたいで悔しいから…。仕方無く上半身だけ裸になる。 男にしては白すぎる肌。 体毛も薄くて、筋肉も殆ど無いから…男にしてはなんとも貧相な体つきだ。 それを気にした事は無かったけど。 今となってはこんな情けない自分が、ひどく恥ずかしく思えた。 と…やけに静かになった室内に、ゴクリと唾を飲む音が響く。 同時に、痛いほど感じる視線に気付いてしまったものだから…。戸惑いつつもタオルでさり気なく隠し、背中を向けた。 お願いだから、そんな眼で見ないで欲しい…のに。 「ッ…!!」 気が付いた時には、既に芝崎の腕の中。 ギュッとその逞しい腕に縛られ、動けない。 肌と肌。遮るモノが何も無いからか… アイツの忙しない心音や熱が、嫌というほど鮮明に…伝わってきた。 「……………」 辺りはしんとしてる筈なのに。 共鳴するみたく互いの鼓動が高鳴って、聴覚を麻痺させる。 耳に掛かる吐息に、 理性を搔き乱されるから…怖い。 「先輩…あやと、先輩…?」 「っ…………」 声なんて出せるわけがないし。 どうする事も出来ない僕は、ただ項垂れるしかない。

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