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「芝崎……」 「ごめん、オレの勝手な行動で先輩の事いっぱい苦しめて、泣かせちゃって…。先輩優しいから、オレが我が儘言っても断れなかったよね…?」 「芝崎っ…」 違うんだ、聞いてくれ。 「一方的に気持ち押し付けて、ごめん…」 僕の本当の気持ちを、どうか────… 「芝崎…!!」 「え…─────」 初めて僕から近付いて、 震える手で腕を掴み… 背伸びをして、キスをする。 これは初めての、僕からの愛情表現。 「せ、んぱ……?」 今の僕は一体どんな顔をしてるだろうか。 そんな事はもう、関係ないな…。 「一方的、なんかじゃない…」 そうだ、嫌なら、 お前が単なる後輩でしかなかったのなら。 こんなに胸を痛めることなんて無かったんだ。 「僕だって…好きなんだっ…!」 拒まず受け入れたのは、僕自身。 欲したのもそう…。 本当はいつだって、独りが寂しくて。 平気なフリして図書室なんかに隠れて…毎日をやり過ごしてたんだ。 そこは本当に虚しかったけれど。 「せんぱ…先輩、先輩…!」 そんな時、光となって現れたのはお前で… 痛みも温もりも愛しさも全部。 本では獲られなかったもの、 僕に足りなかったものを教えてくれたのは、 他でもない、お前なのだから。 「アナタが好きです、綾兎先輩っ…!」 誰かの為とか言って逃げるのはもう、止めにしよう。 本能のまま従えば、 こんなにも簡単なことじゃないか。 芝崎の広い背に腕を回す。 自分の意志でギュッと捕まえて、離さない。 そうすれば応えるように、芝崎も腕を絡めてくれるから。 「も…何処にも行かないでくれ…」 “オレだって、ずっと貴方だけを想うから…“ だから、 傍にいさせて下さい─────…と。 愛おしい声がそう、耳元で愛を囁くから。 今度は互いに、ゆっくりと近付いて。 改めて、 永遠の愛を誓おうか─────… …end.

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