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side. kentarou
「…なぁ…」
(え…────こっち、向いてる…?)
コツンと背中に、先輩のおでこの感触。
シャツ越しに髪が触れ…擽ったさに身体が跳ねる。
(どっ…し…て…?)
ギュッとシャツを握ってくる先輩。
こういう展開は初めてで。
想定外の事に思考が定まらず、ヘンな汗が流れ出した。
(ゆっ…夢?そうだ…そうに違いない…!)
しかし、背を伝う先輩の吐息はリアルを物語る。
熱くそこから溶かされてしまいそうなくらい、
オレの心を揺さぶり締め付けるから…堪らない。
極め付きには、耳を疑うような信じらんない問いを…
先輩はオレに向け、豪速球で投げつけてきた。
「…今日は、何も…してこない、のか…?」
「えっ…」
心臓ってどんくらいの衝撃まで耐えられるんだろ?
バクバクとそれは、断末魔の叫びが如く昂り。
呼吸すら儘ならなくなってくる。
「…男の僕では…やはり、その気にはなれないんだ、なっ…」
今更、気付いた。
先輩…震えてる。
今日はやけに強気だなって思ってたのに、な…。
(ずっと、緊張してたんだ…)
─────ああ、ヤバい…キたかも。
パチンとオレの中で何かが弾け飛んだ瞬間、
先輩はもう、
オレの腕の中に収まっていた。
「あっ……!」
久し振りに直視した先輩は、
頬を赤く染め、涙を堪えていて…
不謹慎にも、色っぽいなとか思ってしまう。
「そんなわけ、ないでしょ…?」
ずっとガマンしてたんだから───…
そう、耳元で囁くと。
それだけで先輩は、ふるりと肩を揺らした。
「どうして、オレを泊めてくれたの?先輩…」
教えて?と目を見つめてねだれば、困った顔されてしまい…それでも先輩はおずおずと口を開き。
キス以上を求めないオレに、不安を抱いたコト。
オレが我慢している事に気付いてしまったコト。
それらの原因が、男同士だからじゃないのか…と。
ずっと悩んでいたのだと、辿々しい口調で包み隠さず全てを打ち明けてくれたから。
(なんだコレ、可愛すぎる…!!)
ギュウッと抱き締める腕を、強める。
遠慮なんていらなかった。
ホントに嫌なら、先輩だってそう言うだろうし。
(好きなら突っ走れ、てことか…)
どんな時も先輩はオレを拒まず、受け入れてくれたんだから。
「しっ…調べたんだ…男同士の、そういうのを…。かなりショックだったけど、お前が望むならって──…でも、お前は何もしてこない、から…!」
「ッ…してるよ、オレ…。先輩に欲情してる…」
「ッ…────!!」
「…先輩は、知らないって思ってたから。いきなりセックスしよとか、迫っても困るだけだろうし…でも、キスしちゃうと止まんないし…。オレもすっげぇ悩んでたんだけど…」
いいんだよね?…ガマン、しなくても。
「あっ…!」
先輩を押し倒して、見下ろす。
不安そうにしてるけど…拒むような素振りはなかった。
(ここまできたら、止まんないよ…先輩…?)
アナタが、オレを惑わせるから。
「オレのモノになって…綾兎先輩…」
全部、ちょうだい。
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