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(あっ…やっぱり今日も見てる…)
「そろそろテストか~…でも綾ちゃんは余裕だよね。」
「そんなわけないだろう、僕も人の子なんだから。」
取り留めのない話をしながらも、僕の意識はある所に飛んでいて。
先程から突き刺さる視線────…正確には、綾ちゃんに向けられている眼差しに。釘付けにされちゃってる。
(ホント、素直じゃないなぁ…)
自然を装い、綾ちゃんの仕草や言葉ひとつひとつ噛み締めるよう…密やかに見守るその姿。
彼のその行動は…
気付けば僕らが3年になった頃から、始まっていた。
最初は彼に目を付けられ、
睨まれているのかなと思ってた。けど…
綾ちゃんを取り巻くクラスメイトの、異様な雰囲気に…違和感を感じたんだよね。
綾ちゃんが3年になってから、常にひとりぼっちなのは知っていた。性格的にそうなるかもっ…て、不安もあったから。
でもなんていうか…このクラスの子達の態度は、
あからさま綾ちゃんに線を引き、避けているようで。
そしてみんなが、今僕が感じている視線の主…
“上原 昭仁 君”の存在に、怯えているような気がしたんだ。
予感は見事的中。
それとなぁく綾ちゃんに探りを入れたら…。
かなり疲れたように苦笑いをしながらも、こっそりと僕に話してくれたんだけど。
上原君は、見るからに不良と言われる人物で。
入学式の時から金髪ピアスの派手な格好で、先生や先輩達からも目を付けられてたような子。
案の定、初日から不良グループの先輩達から呼び出しされて。
上原君はたったひとり、しかもほぼ無傷で全員を返り討ちにし…一気にその名を知らしめた。
彼に取り入ろうとする生徒も、結構いたみたいだけど。上原君は上辺で慣れ合うのが苦手らしく、常に独りで目立ってた。
そんな上原君も、3年への進級が危ぶまれてたそうで。
当時僕と綾ちゃんの担任だった先生から、
単位を補う為の課題が出されたんだけど…。
案の定、上原君は聞く耳持たず。
担任は完全諦めモードで…当時クラス委員長だった綾ちゃんに、ポロッと愚痴を零したんだそうな。
綾ちゃんは一見冷たい人に思われがちだけど。
ホントは世話好き義理人情派の、熱い男だったりして。
綾ちゃんちは僕の家と同じ母子家庭で。
だからこそ解る気苦労なんかも、色々あったから…。
上原君みたいに何処か冷めた人を、放っておけなかったみたい。
友達でも面識ある知人でもない。
しかも悪い噂が飛び交う不良の上原君に、綾ちゃんは怯む事なく彼の元へ行き。課題提出を進言したんだそうな。
何度か上原君を訪問するうちに、一度乱暴に拒絶されたりもしたけれど。
その後、彼も根負けしたのか…期限ギリギリで課題を提出し。
なんとか3年生への進級を果たしていた。
意外にもクラスは綾ちゃんと同じ理数クラス。
きっと彼も綾ちゃんに感謝するだろうなって…
普通は思うんだけど。
暫くして気が付いた上原君の仕打ち。
綾ちゃんが言うには、逆恨みらしいけど…。
何かと絡まれたり、クラスで孤立するよう仕向けたりとか───…綾ちゃんも諦め半分に苦笑いしてたけれども。
不覚にも僕は、気付いてしまったんだ。
上原君のその態度、
ギラついた瞳の奥に隠した…
淡い恋心の、存在に。
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