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side. Akihito
ここの所、水島に付き合って、
ちょくちょく授業にも出るようになった。
とは言っても、サボる時はサボってたけど…。
6限とかマジだりぃとか思いつつも。
放課後はまた一緒なんだからと、とりあえず授業は出るつもりでいたのに────…
「クソッ…!」
ガシャンと蹴り飛ばしたフェンスが、
音を軋ませヘコむ。
つい今しがた、廊下で佐藤に捕まった。
『もうやめなよ。』
何も知らないクセに、
勝手にズカズカと俺の領域に入ってきて────…
ウンザリする…
全てを見透かしたみてぇな簡素な助言。
曖昧な言葉のソレは、
俺の痛いとこを的確に突いてきやがった。
解ってる、佐藤は悪くない。
あの時の水島と同じ…俺なんかの為に、
馬鹿みてぇに必死になってくれてるのに。
また俺はその手を振り払い、傷付けてしまった。
(なんで、だよ…)
俺を好きだと言ったアイツ。
俺の代わりに涙したアイツ。
自分が一番辛いクセに…
どうしてそこまで尽くそうとするのか。
「……あ」
そうか、同じなんだ。
好きなだけじゃ、傍にはいられない。
片道の想いは、決して報われやしない。
確定した悲恋。
答えが最初から決まっているのなら…
(せめて、相手の幸せを…か)
俺が無理して、
水島の傍にいる事を知っている佐藤は…
そんなオレを見てる事が、耐えられなかったんだ。
「お前だって、それでいいのかよっ…」
俺なら耐えらんねぇ…。
どんなに足掻いても、傍にいてぇだろ。
欲しくて欲しくて堪らないなら──────
(それって…)
なんて、自己満足なんだろう。
水島は芝崎への想いと戦っているってのに、俺は…
「うざ…」
俺が傍にいる事で、
水島は更に芝崎と重ね、
縛られていく。
今はまだいい、
けど明日は?明後日は?
忘れられる訳がない。
俺にはそれが、
当たり前に出来ると思ってたけど───…
「無理じゃねぇか、そんなの…。」
フェンスを背にしゃがみ込み、頭を抱える。
(なぁ、佐藤…)
お前も、こんな気持ちだったんだな…。
一途な想いが、必ずしも相手を癒すとは限らない。
ましてや俺が、水島に対してずっと重荷になっちまってたなんて。
(支えるつもり、だったんだがな…。)
それこそ独りよがり。
このままいけば俺も水島も、
ただ自爆していくだけじゃねぇか。
「佐藤…」
振り払った手を見つめる。
アイツを傷付けたその手は、まだ感触が残っているかのように、熱い。
目を閉じれば浮かんできた、
チビで痩せ細った捨て犬みたいなアイツ。
俺よりちっこくて弱えクセに、
中身は山みてぇにデカくて強いんだ…。
「すまねぇ、な…」
立ち上がり、呟く。
全部に片が付いたら、
今度はアイツの前で言おう。
そう、決意して。
俺は屋上を後にした。
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