21 / 54

7

side. Tamotsu 「ねえねえ~、ちょっといいかナ~?」 水の掛け合いで年甲斐もなくはしゃいでいたら、流石にバテちゃって。日陰に並んで、ぼーっと海を眺めていると…。 「キミらって高校生?良かったら一緒に泳ごーよ?」 ヤケに可愛い声でシナを作り、際どい水着で谷間を強調させたお姉さん達が。 僕達…いや、上原君に向けて声を掛けてきた。 「わわっ…」 お姉さん達は大胆にも、僕と上原君の僅かな隙間に割って入り…気付けば両手に花状態な上原君。 途端にムスッとしちゃったのは、僕の気の所為ではないハズ…。 「キミ、すっごくカッコイいよね~!大学生かとも思ったんだけどぉ。ずっと声掛けようか迷ってたんだ~。」 あっそと、皮肉たっぷりにぼやいた上原君の腕に遠慮なく腕を回し。ふくよかな胸をそれに押し付けてくる派手なお姉さん。 僕は堪らずモヤモヤしてしまい… けど口には出せず、気休めにもそこから視線を逸らす事しか出来なかった。 お姉さん達は巧みな話術と色香で以て、上原君を落としに掛かってたけど。 当の本人は、分かり易いくらいに不機嫌オーラを放っており…既に完全無視を決め込んでいて。 相手にされてないお姉さん達が、少し可哀相だったけど…本音はかなり、ホッとしてたんだ。 ──────…だけど。 「ねっ、もお兄さん説得してくんない~?」 鉄壁な上原君は、簡単には墜とせないと観念したのか…と思いきや。今度は予想外にも、僕の腕にその胸を寄せてきたお姉さん。 どうやら僕の事を上原君の弟だと、勘違いしてるみたいだ。 …僕はチビだし、上原君は長身で大人っぽいから。 そう見えても仕方ないけど…ね。 「ホラホラ、行こ~?」 むにむにと、女の子の武器を使われても…困る。 そりゃ、あからさまに胸なんかを押し付けられば、当然恥ずかしいし。少し前なら、普通に流されてたかもしんない。 けど今の僕には…お姉さん達がどれだけ誘惑してこようと、絶対通用しないんだ。 上原君からだったら…瞬殺されてただろうけど。 いつの間にか二人がかりで僕を狙い打ちし始める、 お姉さん達。 正直こういう派手で積極的な女の人って、苦手だから…どうしよう…。 困り果てて真っ赤な顔して俯いても、 その腕は一向に離しては貰えず。 折角の夏休みで、まるで初デートみたいで。 楽しかったのになぁ…とか。 勝手にヘコんでいたら─────… 「…オイ、保から離れろよ。」 上原君が、冷えた声音で言い放つ。 「とっとと失せろ、尻軽女。化粧が濃過ぎて臭ぇんだよ、ブス。」 ピキーン────… 全員…勿論僕も含め、場が瞬時に凍りつく。 「はっ、はぁ…?何言って────」 しかし強気なお姉さん達はすぐ我に返り。 負けじと反論してきたんだけど… 「帰んぞ、保。」 「えっ、あ……う、うんっ…」 聞く耳もたず。 上原君は僕の腕をグイッと引くと、スタスタと歩き出してしまった。 見上げた顔は、スッゴく眉間に皺を寄せ… あからさま怒っていて。 後ろでお姉さん達の罵声が聞こえてきたけど… 僕はもう、それどころじゃなくなってた。

ともだちにシェアしよう!