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side. Akihito (はぁ…たくっ……) 夏休みが始まって早くも2週間過ぎた頃。 唐突に、保が家まで押し掛けてきやがった。 家の場所、なんとなく話しただけでよく判ったなとか…まぁその辺は置いとくとして、だ。 俺はアイツとの接し方に関しては、色々思う所もあったんだ。 学期末、アイツがあからさまに寂しそうにすっから。 いつでも遊んでやるとか…約束はしたものの、自分から誘うってのが…どうも苦手で。 しかも相手は保。 一応、俺の事が好き…らしいから。 今はすぐに答えを出してやれる心境でもねぇし。 だからって、あんまし期待させるようなことはしたくねぇな───…とか考えてたら。 あっという間に、2週間が経っていた。 あん時は夏休みも会えるって、すげえ喜んでたクセに。さすがに待たせ過ぎだろとか… ちょっとイラついてたのは内緒の話。 アイツは俺の取った行動に、 いちいち反応しては振り回されてっから。 なるべく突飛な行動はしねぇよう、 気を付けてるつもりではいた。 人に合わせるのが大嫌いな俺が、 まさか保ひとりに対し、ここまで丸くなれるなんて。 なんだかんだ振り回されているのは、 俺の方かもしれないな…。 押し掛けて来といて、 無計画なアイツには笑ったけど。 ベタにも海とか、何年振りだろうか。 しかも野郎ふたりとか有り得ねぇだろ…。 まぁ、俺から言い出した事なんだけどな。 夏休みの電車は、当たり前に混んでて。 すし詰め状態の、咽せるような熱気にウンザリしてたら… 目の前のアイツは、小刻みに震えながら。 俺に極力触れないようにと必死な顔して、踏ん張ってた。 きっと俺が『友達』なんて線引きを、しちまったから。 自分の気持ちを抑えつけてでも、 合わせようとしてんだなって…。 それがまるで少し前の俺みたいに思えて… 見てたら無性に虚しくなった。 不運にも車体が大きく揺れ、倒れそうになってんのを受け止めてやれば。保は慌て離れようとしやがって、またフラつくもんだから… ちょっとだけ、このくらいならって。 俺の方からその肩を抱き寄せてやった。 途端に耳まで真っ赤にして俯いた保の心臓が、 分かり易いくらいバクバクいってて…。 自分の事をこんだけ意識されてんのかって思ったら。 柄にもなく、俺までその緊張感が移ってきちまうし… …俺も、どうかしてるよな。 海に着いたら、急に表情を曇らせた保。 俺といる時、たまに保はそういう顔をするんだが…。 きっと″友達″として接していく事に、 不安やら疑問やら…色々と葛藤してんだろう。 痛いくらい解っちまうのは、 今の保が、ちょっと前の自分そのものだったから。 本当はこの関係自体…間違ってるのかもしれない。 水島の時とは立場が逆転しちまったけど、 やってる事は全く同じ。 好きな奴の傍に居られる事が、 必ずしもプラスになるとは、 限らねえんだよな…。

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