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side. Tamotsu
「ごめ~ん、待たせちゃったかな?」
「いや…」
せっかく上原君とふたりっきりで、彼の誕生日を祝う事が出来たのに…。
あの日初めて知ったお酒に、僕は惨敗した。
目が覚めたら既に陽はとっぷりと落ちていて。
当たり前だけど、上原君はもういなくて。
テーブルも台所も綺麗に片付いてたから、まさか夢オチ?…とか、不安になって後々確認してみたけど。
やっぱり夢なんかじゃなかったんだ。
こんなコトってないよね。
酔いつぶれて、キミとの貴重な時間をムダにしちゃったし…。
電話越しの上原君が、どことなく素っ気ない気がしたから。
もしかして怒ってたり…するのかな?
だからね、用意出来なかったプレゼントを口実に。
上原君をデート?…に誘ってみたんだけど…
了承はしてくれたものの。
会った途端によそよそしくって、未だにちゃんと目すら合わせてくれやしないから…。
かなりご機嫌斜め、みたいだ。
(う~…こんなことで、へこたれないぞ…!)
「前に灰皿も貰ったし、何も要らねえって言っただろ…。」
「いーんだよ、僕がプレゼント渡したいだけだから!」
いつも通りに接してるようで。
見上げた顔とは、ちっとも視線がぶつからなくて。
罪悪感に、胸がツキツキと痛む。
上原君の都合とやらで、かなり久し振りに再開して、小一時間。未だに一度たりとも、僕をまともに捉えてくれない…
大好きな横顔。
つい泣きそうになりながらも。
遠慮がちに、ぼんやりと見上げていたら…
「わわっ…」
「保っ…!」
不覚にも何もない場所でつんのめった僕の身体が、
ぐらりと前方へと倒れて。
…寸でのところで、上原君の腕に救われた。
『あ…』
思いがけず、バチリと目と声が合わさる。
毎度の事ながら赤面してしまったのは僕…と、
まさかの…上原君も、だった。
「ッ…気をつけろよ。」
バッと勢い良く離れてく上原君は。
やっぱり、誕生日の事を怒ってるみたい。
だったらこんな無理な誘いなんて、
断ってくれれば良かったのに…律儀なんだから。
「ごめん…」
「……何がだよ?」
あからさまに苛立つ上原君の声音に、
ビクンと肩が跳ねる。
「そのっ…折角の誕生日に、僕が酔っ払って台無しにしちゃったから…怒ってるんでしょ?」
「はぁ…?」
そうだよね、きっと。
せっかく上原君の方から誘ってくれたのに…
あんな形で有耶無耶にされたら、僕だってショックだもん。
何だか今にも涙が溢れそうになり、堪らず俯いたら…
「あ~っクソッ…!」
「うええっ…!?」
突然、上原君が叫んでグシャグシャと僕の頭を掻き混ぜる。
ムダな努力で頑張ってセットしてきたのに、
一瞬で滅茶苦茶にされてしまった。
「そんなんじゃねーよ、バーカ。」
「バッ、じゃなんでっ…」
腑に落ちない態度に不信感を募らせ、詰め寄れば。
あ──…と歯切れ悪く苦笑して。後ろ髪を掻き毟る上原君。
「マジで覚えてねんだな…」
「え…?」
「いいんだ、わりぃ…何でもねぇから。」
言ってる意味が解らなくて、首を傾げるけど。
上原君は言葉を濁すだけでまた、誤魔化すように僕の頭を掻き混ぜてくる。
なんとなく腑に落ちないけれど、もう怒ってはいないみたいだったから。
とりあえずホッとひと息、僕は胸を撫で下ろした。
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