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第51話 狼とウサギ逆転?

「本当に残しておくのかい?」 「だって、こんなに可愛いのに食べちゃうなんてできないもん」  涼一はそう言うと愛おしそうに砂糖菓子でできた二体の動物を冷凍庫に入れた。 「またいつでも作ってもらって買って来てあげるのに……」 「じゃ、その子たちもまた残しておく」 「冷凍庫がいっぱいになっちゃうよ」  苦笑する勇介だったが、涼一がそこまで喜んでくれたのはとても嬉しい。  放っておいたらいつまでも砂糖菓子を見つめていそうなので、勇介はやや強引に冷凍庫を閉め、涼一に風呂へ入るように促した。  すると涼一はなんだか恥ずかしそうにしながら言葉を放つ。 「…………勇介さんも一緒に、入ろ……?」 「えっ?」  涼一が積極的にこんなことを言うなんて珍しい。勇介が少しの間呆気に取られていると、彼は真っ赤になったままそっぽを向いた。 「別に勇介さんが嫌ならいい」 「嫌なんかじゃないよ。でも、もしかしたらお風呂で涼一のこと襲っちゃうかもしれないよ?」  勇介が意味深な口調で言ってのけると、涼一はにっこり笑い、 「大丈夫。だって、勇介さんはウサギさんなんでしょう?」  そんなふうに返された。  新しく引っ越しして来たマンションは一応バスルームとトイレは別になってはいる。  だが、とにかくバスルームは狭い。涼一がいくら華奢だと言っても男なので二人で入ると正にぎゅうぎゅうだった。  それでも勇介と涼一は立ったまま深い口づけを交わし、お互いのものを握り合い同時に高みへと昇りつめた。  その後じゃれ合いながら体を洗いっこし、シャワーをかける。 「おい、涼一、顔真っ赤だけど、大丈夫か?」  気づけば涼一は目の焦点は合っておらず、キュウ……と小動物の鳴き声のような声をあげてその場にしゃがみ込んだ。 「涼一!! おい、大丈夫か」 「だいじょぶ……」  ……では、なさそうだ。完全にのぼせている。  勇介は慌てて涼一を姫抱きすると、バスルームから出てベッドに寝かせた。  氷枕と冷えたミネラルウォーターを持って来て、涼一に与える。 「ごめんな。俺がついていながら……」  風呂でエッチなことをしてて具合を悪くさせるなんて、看護師失格だ。 「ううん。勇介さんは悪くないよ。俺が一緒に入って欲しかったんだから」  そんな健気なこと言われると余計に罪悪感に駆られる。  幸い涼一はすぐに気分も良くなり、勇介はホッと胸を撫でおろした。  元気になった涼一は少々落ち込んでいる勇介を見て、いたずらっぽく笑う。 「なんか、勇介さんがそんなふうに肩を落としてると、本当にウサギさんって感じがする」  そう言って後ろから抱きついて来る。 「こら、涼一、気分が治ったんなら、もう寝ろ。今日は一日忙しかったから疲れただろ?」 「やだ。俺は羊の着ぐるみの狼だから、今夜は勇介さんを襲っちゃうんだ」  涼一は今度は勇介の前に回ると、ベッドに押し倒してきた。 「……にわかな狼さん。本当に俺のこと襲えるの?」  大きな瞳に色白の肌……どうみてもウサギさんの涼一に言ってやると、彼はむきになって言い返して来る。 「今夜は、俺が勇介さんを気持ちよくさせる……き、騎乗位で」  最後の方の言葉は真っ赤になって口にする涼一に、思わず勇介は笑ってしまう。 「涼一、どこで覚えて来たんだ? そんな言葉」 「俺だってもう十八歳の男なんだから、それくらいの言葉知ってるよ!」 『もう十八』じゃなく『まだ十八』だと思うけど。  勇介は思うも口には出さずに、とりあえず涼一のしたいようにさせることにした。         

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