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社会人(30歳) 優斗の場合
「ただいま」と帰宅しても「おかえり」という声はない。
今日は金曜日。たいてい俺の恋人の捺くんは泊まりにきているのだけど、今日は用事があって来ていなかった。
捺くんは友達も多いし、遊び盛りの大学生なんだし、会えない日があってもしょうがない。
というより俺も仕事が忙しいんだし。でも、捺くんが高校卒業してからはほぼ半同棲のようなものなんだけど。
まぁ結局、捺くんがいないと寂しいの一言になるわけだが。
蒸し暑い夜、シャワーを浴びてから遅い夕食をとる。
捺くんからLINEが来ていて明日は泊まりにくると書いてあって頬が緩んだ。
夕食をとって読みかけの本を読んで、最近忙しかったのもあって早々と欠伸が出てくる。
日付が変わる前にベッドへともぐった。
捺くんと最後にあったのは二日前だ。たった二日前。おとといの話だ。
平日だというのに俺が帰ってきたのも遅かったというのに捺くんがそばにいると触れたい欲求がつきないんだよな。
一昨日の捺くんも可愛かった、な。
思い出すと微妙な気分になってくる。
寝よう、と思ったとき電話が鳴りだした。
『もしもし、優斗さん』
電話越しに捺くんの声。外にいるのか遠く賑やかな声が聞こえてくる。
「捺くん」
『いまなにしてた?』
「もう寝ようかなとベッドにはいったところ」
『もう? まだ11時だよ』
「うん。疲れたのかな」
『そっか、仕事最近めっちゃ忙しかったもんね。あーあ、俺も一緒に優斗さんと寝たかったな』
ぎゅーってくっついて寝たい、と捺くんが無邪気に――いや確信犯で囁いてくる。
「……明日会えるしね」
『そうだね。明日はいっぱいエッチしようね』
「うん」
向こう側で捺くんを呼ぶ声がして、「またね」『明日行くね』と電話を切った。
通話の終わったスマホをじっと眺める。
「あー……」
どうしよう。捺くんの声を聞いたからかますます微妙な気分になってしまった。
――ひとりで、処理をするか。
一昨日捺くんを抱いたこのベッドで、と、多少罪悪感ではないけど似たようなものを覚えながらも俺はそっと下肢に手を伸ばしていた。
この部屋にいるのは俺だけなのに慎重になってしまう。
半身にふれ掌で包み込み上下に擦る。それだけで気持ちよくなれる男はなんて簡単なんだろうか。
でもその快感も捺くんと一緒かどうかで大きく変わってくるのだけど。
目を閉じて捺くんのことを思い出す。容易くいろんな表情が思い浮かぶ。
可愛くてきれいな顔が快楽に染まって艶っぽく俺を見つめる。甘えたように上目遣いで強請って俺を翻弄するんだ。
なめらかなずっと触れていたくなる肌触りや、ずっとしていたくなるキス。
何度抱いても抱き足りない身体。
生々しく息遣いが耳元でしているように脳内で浮かぶ。
それに合わせて手を動かしていく。
捺くんの体内に挿入しているかのようにきつく手で締め付けて擦りあげて。
「っ……ぅ」
先端から溢れるものを塗り込んで速度を速めて、彼の身体を突き上げる様を想い浮かべて、達した。
慌ててティッシュをとってから、だけど。
このティッシュを取る動作が一気に正気に戻っちゃうんだよなぁ。
イったはイったけど――虚しい。
「やっぱり捺くんとシたいな」
明日になればできるんだけど。
ため息をつきつつティッシュをゴミ箱に捨てて、待ち遠しい明日が早く来るように眠りについたのだった。
【社会人 優斗の場合 おわり】
優斗が出てくるお話は【BLINDFLOD】となります!
よければどうぞ☆
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