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第11話

「っ――…」  明は一分の隙も作りたくないようにぎゅう、と俺に強くしがみついてくる。俺の肩口に顔をうずめながら、甘えるように頬を擦り付けた。 「どこにも、行かないから……」  明は小さな声で呟く。  しかし幼いころから何度も何度も聞いてきたそれを、今更信じられるわけがなかった。 「お前は…っ、いつもいつもそう言って俺を置いていくじゃねぇかっ……!」  幼少期から溜まりに溜まった鬱憤(うっぷん)がとうとう爆発する。涙交じりの怒声が効いたのか、背中に回された明の腕に力が込められる。 「ごめんっ……でも、臣は…待ってくれたから……俺がどっか行っても……悪態つきながら結局、俺が戻ってくるまで待ってくれた…っ、それが嬉しくてっ……俺っ」  明は時折しゃくりあげながら俺の肩口で声を震わせ独白を続ける。 「全部っ、わざとやってた……髪型変えて女子に騒がれるの、も……っ、臣の知らない友達と仲良くしたのもっ……お前が嫌がるだろうって……っ、全部っ、知ってて……お前に嫉妬してほしくて、わざとやった……っ」 「……は?」     今、明は何と言った?  彼の告白に俺は呆気に取られる。肩口に埋まってしまっているその顔を見ようとすると、俺が明を見限るとでも思ったのか強い力で顔を擦り付けながら俺に縋り付いてきた。  腹の底で再び怒りの焔が沸き上がるのを感じる。おもむろに中途半端に埋まっていた楔を根元まで突き入れると、明の口から「ひゃぁ……っ⁉」と甲高い悲鳴が上がった。 「女も?」  明の耳元で低く囁くと、彼は肩をびくつかせながらこくこくと頷いた。 「あっ……そうだよっ……ぅんっ……臣が気づいたらいいなと思って……っ、わざとっ、跡つけてもらっ――…ああっ!!」  俺の質問に対して、明は熱に浮かされたように答える。彼が言い終わる間にわざと音を立てるように抽挿を再開すると、快楽の嵐から振り落とされないようにか、緩みかけていた明の手足が再び俺の身体に強くしがみついてきた。  ――むかつく。  明は全部分かっていたのだ。俺が彼に抱いている歪んだ嫉妬心も、執着心も、独占欲も。  全てを分かった上で、俺を手のひらで転がして遊んでいたのだ。  ――むかつく、むかつく、むかつくむかつくむかつく…!! 「あっ、臣! 待っ、でぇ……あっ、ああっ、うぁ……ァ!」

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