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【27】
「木月……」
「ん?」
名前を呼んだは良いが、「どうした?」と顔を覗き込んできた木月に何て言ったら良いかも分からず、迷った末に縋るように抱きつく腕に力を込めた。
「…………なに、甘えたいの?」
顔は見えないけれど、木月がそう言って微かに笑ったのが分かった。
そして俺が望んだようにぎゅっと抱きしめてくれた。
「…………………。」
静かな部屋に自分の心臓の音だけがドクドクと響く。
気持ち良さにぼんやりしながらしばらくそのままでいると木月が「一ノ瀬」と俺の名前を呼んだ。
肩に乗せてた顔をあげると、俺に何か言わせる隙も与えず木月の唇が俺の唇に重なった。
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