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第24話

 不思議な臭いのする部屋に足を踏み入れ、床に広げられた紙に乗せられたものを見て、これは何かと何気なく問いかけた雪也に対し、それらを手に取りながら眺めていた優はニコリと笑って〝薬だよ〟と答えた。薬というものは非常に高価であるため、あまり見たことのなかった雪也はこれが薬なのかと小首をかしげながらも興味本位でそれらに触れようと手を伸ばした。そんな雪也を見つめながら、優は〝毒でもあるけどね〟と呟く。ピクリと雪也の手が触れる直前で止まった。そんなわかりやすい反応に、優はクスクスと笑う。 〝そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。流石の僕でも触れてはいけない猛毒のある場所なら雪也を入れたりしないさ〟  クスリと肩を震わせている優は決して雪也を嗤っているわけではないと分かっているため気分を害したりはしないが、それでもからかわれたのだと思うと拗ねる自分も出てくる。以前ならば無表情の奥に感情を隠すこともできていたが、最近彼らを前にするとそれが難しくなってきて、やはり優は雪也の胸の内に容易く気が付いた。 〝あぁ、ごめんね。そう怒らないで。確かにこれは触っても大丈夫なやつだけど、毒だという言葉も嘘じゃないんだよ?〟  機嫌を直して、と言う優に、未だ少し拗ねている雪也はジットリとした目で優を見つめた。 〝じゃぁ薬というのが嘘なのですか?〟  毒だというのならば薬にはなりえない。つまり優は最初に嘘をついたのだと思った雪也は少し恨み言っぽく言ってみたが、それにもやはり優は首を横に振った。 〝いいや、薬だというのも嘘じゃないよ。現に僕は薬を作ろうと思ってこれらを用意したからね〟  どういうことか雪也には答えがわからず、思わず眉間に皺が寄ってしまう。そんな雪也に柔らかな笑みを零して、優は眉間の皺を解すように手を伸ばすと、グリグリと指で円を描くように眉間を撫でた。

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