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第66話

 目覚めてから数日は高熱に苦しんだ周も、雪也の懸命な看病と日参した優の治療のおかげで徐々に傷が癒され、今は床から起き上がって歩き、自分で食事を摂れるまでに回復した。さほど高価な物は用意できないが雪也が稼いだ金で周の身体にあう着物を買い、できるだけ栄養のある食事を摂らせ、そうしているうちに気づけば周は言葉こそあまり話さないもののちょこちょこと雪也の後をついて歩くようになった。まだ外は恐ろしいのか庵を出ることこそしないものの、雪也が食事の用意をしていれば背中に引っ付き、薬の調合をしていればすぐ傍に座って。雪也が立ち上がれば同時に立ち、歩けばピッタリと後ろについて歩き、座ればすぐ近くに腰を下ろす。何をしてもずっと雪也の側を離れようとしない周に、遊びに来た弥生や紫呉は「鳥の雛か?」と言って笑っていたが、そのことに周はなんら反論することもなく雪也にくっつき、雪也はクスリと苦笑していた。 「じゃぁ、買い物に行ってくるけど……、一緒に行く?」  米はともかくとして、それ以外は買い出しに行かなければ何もない。必要最低限の銭を懐に入れて、やはり背中にピッタリとくっついている周を雪也は顔だけで振り返った。何度問いかけても、周は首を横に振って庵で待つという。今回もそうだろうと思いつつも、雪也は毎回同じ問いを紡いだ。どうするだろうと、ジッと周の応えを待つ。少しの沈黙の後、周は初めてコクンと頷いた。その事に内心驚きながらも、出来るだけ表に出すことなく雪也は微笑む。そして少し癖のある周の髪を撫でた。

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