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第76話

 雪也は弥生の屋敷で弥生や優に知識を与えられ薬を作ることで銭を稼ぐことができるが、周は使用人をしていた時幼いがゆえに雑役をこなしていた為、雪也が薬を作り時折訪れる患者と話をしている間、周はやることも無くソワソワと雪也の背に隠れてばかりいた。何かしたいのだろうかと雪也も弥生たちに教わったように周に文字を教え、知識を教えたが、しかしそうすぐに銭になるものでもない。雪也はそれを当たり前だと考えるが、周としては当たり前だから仕方がないと諦めることはできなかった。  何か、己に出来ることは無いのか。己に出来て、雪也が喜んでくれるもの。  雪也が薬を届ける為に外へ出ている間、周はうんうんと傍から見れば可哀そうになるほどに頭を悩ませていた。そしてふと、思い出す。  頻繁にこの庵を訪れる弥生が振る舞ってくれる、彼自らが作った料理。その料理を、雪也はすごく嬉しそうに食べていた。  雪也は弥生の手作りだったから喜んでいたのかもしれない。周が作ったところで、あんな風に喜んではくれないかもしれない。けれど疲れて帰ってくる雪也に料理を作ってあげたなら、彼の手間が少しは無くなって、ほんの少しであっても彼の為になり、喜んでくれるのではないだろうか。  そうとなれば彼が帰ってくるまでに作ってしまわなくてはならない。さてどうしようかと考えた時、周は思い出した。 (料理、作ったことない……)

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