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第113話
「大丈夫、変じゃない人の方がきっと少ないよ」
控えめではあるもののクツクツと笑う雪也に由弦はポカンと口を開いて固まり、弥生は流し目を送った。
「ほぉ。雪也も言うようになったではないか」
どこか面白がるようなその声にビクリと雪也の肩が震える。慌てて両手を振って否定した。
「い、いえ、その、悪い意味ではなくてですね!」
ワタワタと弁解する雪也に意地の悪い笑みを浮かべるものの、弥生の瞳はどこか優しくて。そんな二人の様子を優は穏やかに見つめ、紫呉は乱入して行き、周は我関せずとばかりに雪也の背中に引っ付く。
皆がバラバラで、思い思い自由に動き、言葉を紡ぎ、話があちこちに飛ぶというのに誰も不思議に思わずついて行き、とても煩いというのに耳障りではなく、どこか心地いい。初めて知るそんな空間にサクラは早々に馴染んでまどろみ、由弦は身体から力が抜けるような気がした。
「変な奴ら」
クシャリと笑って、そんなことをポツンと呟く。
「なぁサクラ、これから楽しくなりそうだな」
サクラの頭を撫でながら言ったその言葉に、先程までわちゃわちゃと何かを言い合っていた皆が由弦を振り返る。向けられるのは、優しい眼差し。穏やかな笑み。そんな中で、雪也が思い出したように小さく手を叩いた。
「そういえば、聞いていなかったけど……」
すごく真剣な顔をして向き直る雪也に、由弦も思わず背筋を伸ばす。そんな由弦に雪也は問いかけた。
「サクラって、何食べるの?」
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