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第115話

「サクラ! お前こんなにちっちゃかったのか!」  綺麗になり、こころなしか毛もフワフワになったサクラを見て由弦は感動したように抱きしめた。サクラを見れば何故か得意げに笑っている。その様子を庵の中から微笑ましく見守っていた雪也は立ち上がり、手に持っていた濃い灰色の着物を両手で広げた。  サクラも随分汚れていたが、野宿生活の長い由弦もそれなりに汚れていたのだと紫呉は言っていた。流石にそのままという訳にもいかず、宿で湯を浴びさせ紫呉の着物を貸していたらしいが、紫呉は体格も良く背も高いため、由弦に紫呉の着物は少し大きい。ならば弥生や優の着流しをと思ったが、今までが膝も見えるほどに短い着物だったせいか動きづらく、何度も転びそうになって危なかったらしい。かといって丈の合わない着物を着せ続けるわけにもいかず、そもそも由弦の着ていた着物は随分と汚れ、擦り切れていて使えそうにない。そのため紫呉が小さくなって着ることのできなくなった袴を持ってきたのだ。着流しだと歩幅を気にしなくてはいけなくなるが、袴であれば大股で走ることもできる。由弦にはその方が動きやすいだろうという紫呉なりの配慮であったが、やはり由弦には少し大きかったため雪也が丈を直していたのだ。

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