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第128話
腕まくりをしてやる気満々である由弦だが、着物の袖は手を下ろせばすぐに下がってくる。それに苦戦している由弦に微笑んで、雪也は端に避けていたタスキを持つと立ち上がり、手早く由弦にたすき掛けをして袖が下りないようにした。
「お! ありがと!」
これは良い、とブンブン腕を振る由弦を手招き、雪也は庵を出て庭へと向かう。これは薬草だから抜いては駄目で、これは雑草だから抜いてほしいと、簡単に説明する雪也の声に由弦は真剣な眼差しで頷き、わかった、と立ち上がった。
「じゃぁ、お願いするね。何かあったらすぐに声をかけて」
「おう! 雑草を根こそぎ奪っておく!」
「よろしく」
おっしゃぁ! と気合を入れてしゃがみ込む由弦に微笑み、雪也は庵へと戻った。周と一言二言交わしてから、薬研の前に座り薬の調合を再開する。
周が野菜を切る音と雪也が動かす薬研の音、サクラのイビキが響く静か……とは言い難いかもしれないが、それでも穏やかな時間が過ぎていく。幾つかの薬包を作り終えた時、その穏やかな時間は迫る足音と共に終わりを迎えた。
「雪也ちゃん! 雪也ちゃんいるかッ!?」
扉を壊さん勢いでやって来た男に雪也と周が顔を上げる。あまりの騒ぎにむくりとサクラも顔を上げた。
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