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第129話

「そんなに慌てて、どうしました?」  雪也は立ち上がり男へ近づく。この男は町の奥にある長屋に住む浪人であり、彼が町人と同じように雪也ちゃんと呼んでいるだけで特別親しい間柄でもない。そんな彼がこんなに慌てて何用だろうか。なんだか嫌な予感がしてあまり内容を聞きたくないという衝動に駆られるが、そうも言っていられない。 「大変なことになってんだ! 俺と一緒に来てくれ!」  慌てたままの男は説明にすらなっていないことにも気づかず、早く早くと雪也の腕を掴んで引っ張る。強い力に雪也が転びそうになり、周が慌てて駆け寄った。 「ちょッ! それだけじゃわかりません。とりあえず説明してくださいッ。でないと行ったところで何をしたら良いのかもわかりませんッ」  周が支えてくれるおかげでなんとか体勢を戻した雪也は、半ば叫ぶように訴えた。その声にハッとして、男が慌てて雪也を掴んでいた手を離す。 「わ、わりぃ。はやく雪也ちゃん連れて行かねぇとって思って、焦っちまって」 「わかりましたから、とりあえず説明してください。急いでいるのでしょう?」

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