「さっきはとっても助かったよ。ありがとう。でも由弦、周も、クソ変態は駄目だよ。たとえそれが本当のことであったとしても、クソ変態どころかクズクソ変態であったとしても、本人にそれを言っちゃいけない。どれだけ本当のことでもね」 　駄目だよと、どこか優を思わせるその微笑みに由弦の頬がヒクリと震える。実は雪也が誰よりもめちゃくちゃ怒ってるじゃないかと周に視線を向ければ、周は怒られたことでシュンとしているものの、クズクソ変態という言葉に何度も頷いていた。そんな雪也と周の様子に、腕の中にいたサクラがニヤリと笑みを浮かべながら「ふふふふふ」と低く笑っている。 (もしかして、俺以外みんなヤバい奴？) 　ちゃっかり自分を除外しながら、由弦は胸の内で首を傾げた。 「貴様らァァァァァッッ!!」 　すっかり話の中から追いやられている男が顔を真っ赤にして低く唸っている。その声に雪也が拳を握った瞬間、ふわりと灰の絹が翻り雪也の肩をポンと叩いた。 「なにやら騒がしいな。雪也も珍しく苛立っているようだ」 　穏やかなその声に、雪也の肩から力が抜けたのが見える。雪也の隣に立つその姿に、由弦と周も知らずホッと安堵の息をついた。 「襲撃があったわけでもねぇのに、町中で刀をチラつかせるんじゃねぇよ。危なっかしい」 「雪也たちも危ないから下がってて」 　男がいつ刀を抜いても対応できるように紫呉が槍を握り、優が雪也達を背中に庇う。そんな二人より前に出て、弥生は腕を組むと男を見下ろした。