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第145話

「まったく、紫呉も言いたい放題だな。だが雪也、厄介ごとに巻き込まれるなというのは私も同意見だ。治療しに行くなとは言わんが、仲裁はお前の役目ではない。そういうことは警部所の管轄だ。お前が自分の力を過信したなどとは思わんが、そう静かにキレるな。危ないことは、それを生業にしている者に任せれば良い」  こういった仲裁は警部所の仕事だ。弥生は雪也に言い聞かせるように、町人にも遠回しに釘を刺した。治療という意味でならば雪也を呼んだことに関して間違いなどとは言わないが、どうして雪也を呼ぶと同時に警部所に行って人を呼んでこなかったのか。雪也に対して静かにキレるなと言った弥生こそが、今静かに怒りを溜めていた。 「……ごめんなさい、弥生兄さま」  シュンと力なく俯く雪也に周が手を伸ばす。ギュッと袖を握りながら心配そうに見上げる周に、雪也は大丈夫だと力弱くも微笑んで、その頭を撫でた。

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