153 / 647

第152話

「お、お願いです。優さまがいるなら、周が来たと伝えてください。雪也のことで、話がしたいとッ」  あまりに必死な様子に門番は一歩後ろに下がるが、周の口から出た〝雪也〟という名に不信感を霧散させる。  門番は周のことを知らないが、雪也のことは知っている。弥生が保護した美しい青年の名に、ゆっくりと己の腕を掴む周の手を離させた。 「周という名だな? 秋森様に確認してくるから、少しここで待て」  そう言って、門の内側にいたのだろう同僚に交代するよう頼んで、門番の男は中へ走っていった。  どれくらい門の前で待っていただろう。実際にはさほど長い時間ではなかっただろう。それでも永遠と思える時間を、バクバクと心臓をうるさくしながら周は待った。己を落ち着けるように小さく息をついた時、目の前の門が再び開く。 「やぁ周。よくここまで一人で来れたね」  開いた門の向こうから、優しく微笑む優の姿が現れた。その姿にホッと息をつく周に、優は中へと手招く。

ともだちにシェアしよう!