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第157話
雑草抜きや水やりを終え、サクラと一緒に由弦が帰ってくる。もう洗濯物は乾いているだろうかと呟けば、由弦はサクラと一緒に元気よく取り込みに言ってくれた。
煮物を作り、由弦と一緒に洗濯物を畳んでいれば、雪也がいつものように両手いっぱいにお土産を貰って帰ってくる。昨日のお礼だと、お小夜からは団子をもらったみたいだ。
「夕飯の後で一緒に食べようね」
そう言って笑う雪也に、周は頷き由弦は太陽のような笑みを浮かべる。
一緒に笑って一緒に夕飯を食べて、そして灯りを消して眠る。しばらくすればゴソゴソと小さな音がして、周がうっすらと瞼を開けば、やはり雪也が起き上がっていた。引き出しから薬包をふたつ取り、喉奥に流し込んでいる。周が持ち出した薬包は雪也が出かけている間に引き出しに戻しておいたから、きっと雪也には何も知られていないだろう。
〝変わらず、雪也の側にいてあげてね〟
優の言葉を思い出し、周は何も見ていないというかのように瞼を閉じて眠ったフリを続けた。
周は何も知らないし、何も気づいていない。今もずっと、周はグッスリ眠っている。雪也の中でそうあるように、カタリと扉の開かれた音を聞きながら吐息を零した。
「弥生、少し邪魔をするよ」
わざわざそう言って部屋に入って来た優に、弥生は読んでいた書物から顔を上げた。
「いつも気にせず入ってくるというのに珍しいな。紫呉まで一緒で、何かあったか?」
書物を閉じて床に置きながら視線を向ける弥生に、優の後ろを歩いていた紫呉は首を傾げながら肩を竦めた。どうやら紫呉もわけがわからぬままに連れられてきたらしい。
「弥生たちが城に行っている間にね、周が来たんだよ」
「周が? 珍しいな。雪也は一緒じゃなかったのか?」
一人だったね、と弥生の問いに答えた優に、弥生も紫呉もほんの僅かに目を見開いた。
周は人見知り気味であるため、あまり積極的に一人で動くことはしない。今でこそ食材の買い物などは一人で行っているようだが、来たことも無い春風の屋敷に一人で訪れるなど、珍しいどころの話ではないだろう。
「……何か、雪也にあったのか?」
鋭い瞳を優に向ける弥生は、雪也と断定した。おそらくはほんの僅かの間に答えを見つけ出したのだろう弥生の推察に、優は微笑む。
周に何かあれば弥生たちではなく、相談するならばまず雪也にするだろう。由弦かサクラであっても同じであるし、もしも弥生たちの力を借りなければならないものであれば周ではなく雪也が来るはずだ。雪也が動いておらず、周が必死になる理由。それを考えればひとつしかない。
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