159 / 647

第158話

「昨日、雪也がこれを飲んでいたようだよ。あぁ、これは中身が同じだけど僕が作ったもので、周が持ってきた薬包は持って帰らせたけどね」  懐から取り出した薬包を弥生に渡す。カサリとそれを開いた弥生は鼻を近づけ、眉間に皺を寄せた。 「これ、何なんだ?」  同じように顔を近づけた紫呉であるが、彼は薬の知識はない。首を傾げた紫呉に、弥生が答えを呟いた。 「精神安定剤の類だ」  その言葉に、紫呉は目を細める。 「精神安定剤? あいつ、何か悩んでんのか?」  言って、紫呉は首を傾げる。雪也は華奢で儚げに見えるが、実際はそう気弱ではない。弥生と優が近くにいたこともあり、彼は嫌な事を受け流すことや、ある種のしたたかさも覚えた。直情的で声が大きく、良い意味で騒がしい由弦が思わず黙ってしまうほどにはポンポンとモノも言う。そんな雪也が薬を飲まなければならないほどに追い詰められているならば、その悩みは少々のものではないはず。では、何が? 「僕も気になって、弥生たちが帰ってくるまでに少し調べてみたんだ。昨日、周が言っていたことも気になったしね」 「周? 何か言ってたか?」  昨日と言えば茶屋で男が刀を振り回そうとしていた時だろうか。何かおかしなことを言っていただろうかと記憶を掘り起こしながら唸る紫呉に、弥生はふと思いついたように瞬きをし、小さく息をついた。

ともだちにシェアしよう!