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第160話

「ただ、こんなことになるなら許容量を素直に教えるんじゃなくて、少し手前くらいを教えておいた方が良かったとは思うよ。ま、後悔したところで時間は巻き戻らないからどうしようもないけれど」  小さく息をついて、優は弥生を見る。深く考え込んでいる弥生に、どうするのかと問いかけた。 「雪也が周たちに知られたくないと思っているなら、ここに呼ぶ?」  雪也が弥生に懐いていることは周知の事実だ。彼がこの屋敷に来たところで周たちも不思議には思わないだろうし、雪也もあまり気負って来ることは無い。弥生が話を聞くと言ったら、その胸の重みを打ち明けてくれるのではないかと優は考えたが、弥生は静かに首を横に振った。 「いや、我々は何も聞かなかったことにしよう。雪也に対して特別何かする必要はない。今は、してはならないだろうからな。いつも通りに振る舞えばいい。特別構うことも、距離をとることもなく、いつも通りに」  務めを終えて時間が出来れば庵に赴き、皆で食事を摂る。適度に話し、甘やかしてやればいい。そう弥生は結論付けたが、優はともかくとして紫呉は納得できないとばかりに渋面を作った。

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