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第168話

「雪ちゃんはね~、あんまりそういうの気にしないというか、良い意味で興味ない? 感じなんだよね。湊が日本語喋れるから、ちゃんと意思疎通はできるし、ん~、特に問題ないんじゃない? 雪ちゃんはすごく優しいから、大丈夫だよ。たま~に毒舌になるみたいだけど」  何も心配はいらないという蒼に、見た目を気にしない人がこんな身近に複数いるのかと湊は困惑するが、そんな湊を他所に雪也は蒼の言葉に苦笑してみせた。 「毒舌だなんて心外」 「も~、商売人を舐めちゃいけないよ? 色々話はまわってくるんだから。ま、でも、僕はそれくらいで丁度良いと思うけどね~。じゃないと今頃、雪ちゃんの周りに男女が押しかけてきて、やれ婚姻だ、やれ養子にって大変な騒ぎになっちゃうよ」  若く、見目よく、働き者で、性格も良し。たとえ家柄がなかったとしてもぜひ家にと引く手数多だ。それも随分熱心な引く手数多であるから、雪也がある程度あしらい毒を吐いていなかったら、彼は今頃こんなにのんびりと買い物をすることはできていないだろう。 「まさか。婿としてならもっと素敵でお家柄の良い人はいっぱいいるし、息子が産まれなかった名家の人なら跡取りとして養子にっていう話も出てくるだろうけど、そういうところは血を重んじるし、それ以外なら子供の産める女性を迎えたいって思うよ」  蒼は良く言い過ぎだと笑う雪也を、湊はポカンとして見つめる。そんな湊に苦笑しながらも、蒼は雪也の言葉をあえて訂正しなかった。

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