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第176話

「邪魔するぞ、周。適当に持ってきたが、今日の献立に使えそうか?」  中に入ってすぐ、手際よく野菜を切っている周に声をかける。振り向いた周に風呂敷の中を見せれば、彼はほんのわずかに口元を緩ませ、ひとつ頷いた。 「たくさん食べられるから、由弦も喜ぶ。雪也は、あんまり食べてくれないけど」  ポツリと呟かれたそれに全員の視線が雪也に向けられる。雪也は小さく苦笑しながら肩を竦めた。 「ちゃんと食べてますよ。由弦が良く食べるので、僕が少なく見えるだけです。食べる量は変わってません」 「のわりには痩せたみたいだけどね」  容赦なく逃げ場を無くそうとする優であったが、良い意味でも悪い意味でも彼らに慣れている雪也は臆するでもなく「本当ですって」と誤魔化し続けた。その様子にムッとしながらも周は俯く。  雪也は周をまだまだ子供だと思っているのか、周が何を言っても受け止めてはくれるが、のらりくらりと躱して改善しようとはしない。それが周に迷惑がかかるものでもないから強くも言えなくて、それでも心配だからと雪也があまり逆らわない弥生に伝えるのだが、雪也は彼ら相手でものらりくらりと躱していくつもりのようだ。

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