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第177話

  周には吞み込んだ言葉が沢山ある。雪也は綺麗なのだから、もっと自分を誇ってほしいとか、雪也が稼いだお金なのだから、もっと雪也自身に使ってほしいのだとか。もっと弱い部分を晒してほしいし、もっと雪也に頼ってもらいたい。雪也の力になりたいし、笑っていてほしい。何か思い悩んでいるなら話してほしいし、もっと自分を大事にしてあげてほしい。雪也は自分自身に優しくないけど、もっと優しくしてあげたって良いはずだ。  けれど、きっと雪也はそんな言葉を声にして伝えたって、またのらりくらりと躱してしまうだろう。  悔しくて、悲しくて、寂しくて、どうして自分は子供なのかと、雪也よりも大人に、せめて同じくらいの歳であればよかったのにと、どうにもならない苛立ちと悲しみを覚える。そんな周の複雑な胸の内を察したのか、弥生はポンポンと周の頭を優しく撫でて雪也に近づき、その真白な両頬を摘まんで、みょーんと引っ張った。 「私は食べさせるのが大好きだからな。まぁ、今日は覚悟することだ。お前はもう逃げられん」 「最後のは悪官みたいな言葉だねー」

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