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第178話

 クスクスと笑う優に、ムニムニと雪也の頬を弄る弥生。そんな二人に流石の雪也もどうしたものかと苦笑している時、ようやく二人の世界から出てきたのかサクラを抱いた紫呉と由弦が庵に入って来た。雪也の頬を摘まんでいる弥生に遊んでいると勘違いしたのか、由弦が静かにたたずんでいる周の側に行って、周の頬をみょーんと引っ張った。 「にゃにひゅる……」  何する、と言いたいのに頬を引っ張られているため間抜けな言葉になってしまい、周は不満だと言わんばかりにムッと顔を顰める。そんな周に由弦はニカッと笑った。 「何があったか知らんけど、あんま暗い顔すんなよ。紫呉が甘いものも持ってきたって言ってたんだ。何だろな? すっげー楽しみ」  伊達に毎日三人で過ごしているわけではない。周が雪也に特別な感情を抱いていることも、雪也が話を聞いているようで雪也自身のことに関してのみのらりくらりと躱して聞こうとしないことも、そのことに周が悩んでいることも由弦は知っていた。おそらくはまたこの手のことで落ち込んでいたのだろうと、由弦は何も知らないフリをしてムニムニと周の頬を撫で繰り回す。

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