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第203話
ゴソッとほんの微かな音を耳にして、周は目を開けることなく目覚めた。毎日コッソリと聞いているその音に耳を澄ませれば、足音こそ聞こえないものの気配が遠ざかったのがわかる。しばらくしてカサリと乾いた音を聞いてから、周はうっすらと目を開いた。
月明かりが差し込むそこで、雪也はいつものように薬を呷っている。だが今日はいつもと違い、飲んだのはひと包みだけであるようだった。
早々に薬を飲み終えて雪也が踵を返す。慌てて目を閉じ、寝たふりをした周はいつものように庵の扉が閉まった微かな音を確認してから、ゆっくりと起き上がった。
(今日は、ひと包みだった……)
新たに作るのを忘れて、今ある薬がひと包みだけだったのだろうか? そんな雪也らしくない理由を考えては首を傾げる。雪也がまだ戻ってこないことを確認して、周はこっそりと布団から起き上がると薬が仕舞われている引き出しのもとへ向かった。そして記憶にある引き出しを開ける。
(いっぱい、ある……)
そこには十分な数の薬包があり、作り置きしていなかったから飲まなかったという線は消えた。ならば何故だろうと首を傾げるが、周はハッと思い出して慌てて布団へ向かう。
薬のことを知っているのは、雪也には内緒なのだ。雪也がいつ戻ってくるかわからない以上、引き出しの前で立っているのはまずい。
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