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第205話

 薬が効いているのか、雪也はグッスリと眠っており起きる気配はない。月の化身と言われれば信じてしまうほどに美しい寝顔は、どこか穏やかに見える。その事実に周は強く拳を握りしめた。  雪也に苦しんでほしいと思っているわけではない。薬を減らせ、穏やかに眠れるのならそれに越したことは無い。その気持ちに偽りなどないが、そうなるほどに雪也を支え守った者の中に己がいられないことを悔しく思うのだ。  雪也の為なら、周は何でもできる。守ってあげたいし、苦しんでいるのなら助けてあげたい。だが――。 (この手は、小さすぎる)  己の手に視線を降ろし、唇を噛んだ。  雪也にとって周はどうあっても守るべき対象で、守ってくれる相手ではない。周を甘やかすことはあっても、甘えてはくれない。料理だって、周が庵に居やすいよう雪也が居場所を作ってくれただけで、周が何もできなくとも雪也は困らないし、寂しくも思わないだろう。 (雪也……)  あなたにとっての弥生様たちになりたいわけではない。けれど彼らと肩を並べることはできずとも、あなたに頼られる存在でありたいのだ。

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