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第206話
あなたを抱きしめてあげたい。その背を撫でて、甘やかしてあげたい。きっとあなたは全部を預けてはくれないだろうけれど、せめて半分だけでも、あなたの苦しみを共に背負いたい。言いたくないなら、過去など話さずとも言い。聞き出そうなどとは思わない。ただあなたの隣で、せめてそっと寄り添いたい。あなたを独りにしたくないと思うのに、己はそこに行けない。あなたは大人で、自分は子供だから。
(もっと、大人だったら……)
せめて、雪也と同じくらいに大人だったら、頼ってくれただろうか? 抱きしめさせて、くれただろうか。
「ねぇ、雪也……」
雪也の頬に手を伸ばし、途中で止めて握りしめる。
「どうしたら……」
あなたの力になれるのでしょうか。
問えども問えども薬で眠っている雪也から応えは返ってこない。当たり前のことだとわかっているけれど、それがなんだか悲しくて、周はそっと雪也の髪をひと撫でした。
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