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第207話
嫁姑問題というものはどこの世界にでもあるものだ。それは高貴な者であろうと市井の者であろうと変わらないだろう。弥生とて、そこに自分が関わってこそいなかったが常に目の当たりにしていた。だが、この城で行われる嫁姑問題はそこらにある問題とは少し違い、複雑極まりない。
姑であり大奥の大御上として立場的には上にあたる女院は、しかし峰藤の領主から摂家のひとつに養子に出てから嫁いできたとはいえ、その出自が峰藤領の娘であるということは周知の事実。そして嫁の立場である御上の静宮は立場こそ下であるが、その生まれは今上帝の妹姫。摂家どころか正真正銘姫宮である静宮は、当然ながら出自としては最高位であるだろう。
大奥としては出自がどうであれ先代の大御上である女院が上の立場であるとしたいが、華都からついて来た女官たちは衛府が乞うて降嫁してきたのだから当然姫宮様である静宮を尊ぶべきであり、その相手が大御上であったとしても頭を垂れるべきは相手であると譲らない。これには身分としては将軍である茂秋ですら姫宮である静宮よりも下の位になるという女官達にとっては確固たる理由があるのだが、それでも、それでも、と大奥側も華都側も互いに譲らない。
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